うなぎの豆知識

浜名湖産 活うなぎの蒲焼き

うなぎと文化

うなぎは昔から人々の暮らしのなかにとけこんできました。
古くは「万葉集」に「武奈伎」「牟奈伎」という名前で登場しますが、実際は、もっと古くから食用とされてきたようです。 その後、俳句・川柳・落語・小咄・小説・諺等のなかに鰻を扱ったものが数多く登場しています。

うなぎの短歌

大伴家持(おおとものやかもち)

石麻呂に 我物申す 夏痩せに 良しといふものぞ 鰻(むなぎ)捕り喫(め)せ
(万葉集巻十六 )
痩す痩すも 生けらばあらんを はたやはた むなぎを漁ると 河に流るな
(万葉集巻十六 )

斉藤茂吉(さいとうもきち)

この夕べ 鯛の刺し身と ナイル河の 鰻食はしむ 日本の船は
もろびとの ふかき心に わが食みし 鰻のかずを おもふことあり
十余年 たちし鰻の 缶詰を をしみをしみて ここに残れる
夕暮れし 机の前に 独りいて 鰻を食うは 楽しかりけり
あたたかき 鰻を食ひて かへりくる 道玄坂に 月おし照れり
これまでに 吾に食はれし 鰻らは 仏となりて かがよふらむか

うなぎの川柳(せんりゅう)

武玉川(むたまがわ)

夫婦して鰻を食へばおかしがり
かはやきの煙の中に善の綱
よい陰へ放しうなきや蓮の花

柳多留(やなぎだる)

串という字を蒲焼と無筆よみ
旅鰻化粧につける江戸の水
土用丑のろのろされぬ蒲焼屋
うなぎ屋の隣茶漬けの鼻で喰ひ
釣って来たうなぎ是非なく汁で煮る
ぬらっかする間にちょいと錐を刺し
丑の日に籠でのり込む旅うなぎ
口ほどにうなぎのさけぬ料理人
錐よ金槌よと素人の鰻

やない筥(ばこ)

悪い思ひ付き生きたうなぎを呉れ
うなぎを丸で貰ったも困る物

宝柳

割く事はおいて鰻とつかみ合う
旅鰻化粧につける江戸の水

うなぎの落語・小咄(こばなし)

鰻の幇間(たいこ)

金の無い野幇間の一八が、土用の日にうまいことをいってうなを人にたかる腹づもりが、逆に騙される話し。なんとか逃げようとしてうなぎの器やおしんこにケチつけるが結局土産代まで払わされるお話。

素人鰻

武家の商法でうなぎ屋をい始めた侍と、酒乱のうなぎ職人「神川の金」のからみで話しが進む。うなぎには素人の侍がうなぎの滑り止めに糠を使おうとしたり、奥方がなぎなたを持ち出して一匹のうなぎに対峙する場面がクライマックス。

後生鰻

浅草のうなぎ屋の前を通りあわせた大家のご隠居、ふと店の中を覗くと、亭主が鰻を裂こうとしている。殺生はいけないと鰻を買い吾妻橋の大川に逃がしてやった。こんなことが二、三度続くと鰻屋もさるもの、ご隠居が通るころを見計らって裂くふりをし鰻を買ってもらった。ある日、ご隠居が通るのに鰻が無い。そこで自分のうちの赤ん坊をまな板にのせて切る格好をしたところ・・・・。

鰻谷

大阪の「菱又」と言う川魚料理屋の主人の話。ここの主人が変わり者で魚がたくさん採れた時は商売せず、時化で魚が採れない時に店を開くという変わり者。そんな魚が採れないある時に、当時は縁起の悪い魚で食べられていなかったヌルマ(うなぎ)を見つけていろいろ料理をするが・・・。

鰻の天上

鰻を調理している男が、鰻の頭を空に向けたため、鰻と共に天に昇ってしまったというお話。1年後その妻子が弔いをしていると空から短冊が・・・。

蒲焼き・・・小噺「大御世話」より

江戸にケチな男がいて、鰻屋の前へ行っては、 蒲焼の匂いを嗅いで「ああ、うまそうだ。よだれが出る」と急いで家へ帰って飯をかきこんでいた。
あまりたびたびなので、鰻屋のおやじ、「匂いだけおかずにするとは卑しいやつ」と腹を立て、八百文の代金を請求した。
ケチな男は「え?俺は何も食ってないぞ」鰻屋のおやじ「食わなくても、蒲焼の匂いの代金を払ってもらおう」すると男は、財布から八百文出して板の間へ投げ、ちゃりん、ちゃりん、と音をさせたあとで拾い集めながら言った。「それなら銭の音を聞くだけでいいだろう」

うなぎの小説・童話・書籍

『うなぎの本』・『鰻学』・『うなぎの旅』 松井魁 著
『てんやわんや』 獅子文六 著
『公害うなぎの冒険』 伊東和子 著
『火事息子』 久保田万太郎 著
『ウナギのふしぎ―驚き!世界の鰻食文化』 リチャード・シュヴァイド 著
『うなぎ風物詩』 川口昇 著
『浜名湖うなぎ今昔物語』 相曽保二 著

うなぎの映画

『うなぎ』 カンヌ映画祭グランプリ受賞 原作:吉村昭 監督:今村昌平

うなぎの歌

『うなぎのじゅもん』 作詞作曲:小椋佳 歌:小椋佳&アルザ

うなぎの諺(ことわざ)

うなぎ登り

物価・温度・地位等がどんどん上がること

うなぎの寝床

間口が狭く、奥行きが深い家屋などのたとえ

うなぎの木登り

なし得られないこと

火事の話しに逃げた鰻

火事の話しと逃げた鰻の話しは時が経つとだんだん大きくなるたとえ

鯊(はぜ)は飛んでも一代、鰻(うなぎ)はのめっても一代

どのような生活をしようとも、貴賎の別なく一生は一生であることのたとえ。

鰻の頭の水を飲むよう

鰻の頭を切っても生命力が強くまた水をのむように見えたことから、死にそうで死なないことのたとえ。